日本の家の歴史(耐震編)を見て頂こうと思います。
大きな地震のたびに建築の基準は改正され、特に壁の構造は大きく変わってきました。
断熱も、昔は「夏涼しい家にすればよし」とされてきましたが、現在では、「夏涼しく、冬暖かい家」が主流となってきています。時代ごとに主流が変わるの で、今後の家づくり(新築、リフォーム)を考えるにあたって、「どのように家づくりが変わってきたのか?を知ることは、大切なことです。
1950年(昭和25年)~1980年(昭和55年)に建てられた家 (築30年以上)
建築基準法(建築の法律)が定められたのが、1950年(昭和25年)。まだ60年程の歴史しかありません。
当時は、地震や風を受け止める壁(耐力壁)というものがありませんでした。
屋根には、「日本瓦」か「セメント瓦」が使われていた上、断熱のためもあり、土をできるだけ多くのせ、その土で瓦を止めていました。ですから、屋根が非常に重くなっています。
基礎にはコンクリートが使っていますが、鉄筋が入っていないものがほとんどです。基礎の形状は断面が逆T字型の布基礎と呼ばれるものが主流で、布基礎以外の床下の土間は土のままで、湿気がこもりやすくなっています。
そのため、土台などの床下廻りの木が、湿気やシロアリの被害により腐食しているケースがよくあります。
断熱材は、壁の場合、土壁か30~50mmのグラスウール、もしく は、全く入っていないかで、断熱はあまり重要視されていなかったと思われます。床や天井には断熱材はほとんど入っておらず、主寝室などの床は畳が主流だっ たので、それほど不快感は感じなかったかもしれません。しかし、廊下の床は夏暑く、冬冷たかったと思います。
1981年(昭和56年)~1999年(平成11年)に建てられた家 (築10年~30年)
1978年(33年前)にM7.5前後の宮崎県沖地震が発生し、その経験を基に、1981年に建築基準法が改正されました。
改正内容は、地震を受け止める壁(耐力壁)の量の基準が決められ、筋交(壁の中に対角線上に張り渡される部材)がしっかり入れられるようになりました。また、柱などの構造部材の接合部に、ボルトやプレートなどの補強金物が採用され始めました。(義務ではない)
屋根は、土を載せた重たい瓦に代わり、軽量で安価な石綿(アスベスト)屋根が使われるようになりました。しかし、アスベストは人体に有害なため、現在では使われいていません。この時期のアスベストの屋根をやり換えるときは、注意が必要です。
基礎は、布基礎のままですが、鉄筋が入るようになり、ひび割れが出にくくなりました。また、床下の防湿のため、基礎以外の土間に厚さ50mm程度のコンクリートが打たれるようになりました。
断熱は、壁はもちろん床や天井にも使われ始めました。1992年に「新省エネルギー基準」といって、断熱に対する基準が制定され、家の断熱性能が2~2.5倍にあがり、室内の環境が良くなってきました。
2000年(平成12年)~ に建てられた家 (築10年未満)
平成7年に阪神・淡路大震災が起こり、被害が目立った箇所などの構造の規制が強化されました。
この震災で、築30年以上の瓦屋根の家がほとんど倒壊したこともあり、軽量の金属のガルバリウム鋼板(亜鉛とアルミニウムの合金メッキ)が使われるようになりました。
震災の5年後の2000年(平成12年)に建築基準法が改正され、耐力壁の配置をバランスよく配置することが義務付けられました。今までは、位置の指定がなかったため、地震などの力がスムーズに建物から下部へ伝わらなかった建物が多く、崩壊してしまった建物が多かったのです。
基礎においては、布基礎と床下の土間を一体にしたべた基礎が主流になり、以前と比べて安定したものになっています。家を建てる際の地盤調査も、義務付けられました。
断熱においては、1992年の「新省エネルギー基準」よりも性能が高い「次世代エネルギー基準」が定められ、「夏涼しく、冬暖かい」家になりつつあります。次世代エネルギー基準は義務ではありませんが、税制優遇や助成金などで、国は普及を後押ししています。
また、長期優良住宅といって、これも義務でありませんが、「100年住める家」にするための「耐震、省エネ性、メンテナンス性、可変性」などの基準が定められており、これも税制優遇や助成金などで、国は普及を後押ししています。
今後の住まいは、長期優良住宅が標準基準になっていくと思います。
このように、木の家はいろんな経験を基に進化してきています。
今から家を考える人だけでなく、今住んでいる家も、安心して住み続けるために、今の基準はクリアしておきたいところです。
そのために、耐震診断をして自分の家のどこが、今の基準に満たないのかを確かめた方がいいですね。
今回の内容はちょっとむずかしかったですかね。
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