私は構造材や枠材、床フローリング材は、きまって国産杉を使います。
杉って戦後、焼けてしまった山や荒廃してしまった大地に、復興の時に役立つようにと、一番たくさん植えられたのが杉だったのです。
なぜ杉が一番たくさん植えられたかと言うと、「生長の早い木」だから。
家づくりや物づくりに使える「資源」として、一番早く育てられる木だったから、戦後こぞって全国に植えられたのです。
生長が早いだけでなく、杉はまっすぐに育つので、家の柱に使うのにとても使いやすい木でもあります
杉の名前の由来は、「直ぐ木」(すぐき)と言われている程、素直にまっすぐに育ちます。だから、山で伐採して、製材するだけで、そのまま柱や梁に使えるのです。
杉の特徴の一つとして、丸太の芯の部分と外側の部分の色の差がはっきりしてるのです。
水やシロアリなどの外敵に強いのが芯の部分の赤身、強度的に強いのが外側の白い部分の白太。
人で例えると、赤身が人生荒波を乗り越えた精神的にタフな50歳台以上
白太が10代~20代の体力が有り余った若者ってところです。
えー余計わかりにくい・・・?(汗)
梁など強度の必要なところには、わざと白太の部分を残して木取りをしてたりするのです。
赤身は水掛りの外部の柱・デッキ材、床下回りの土台に利用したりするのです。
これだけ色がはっきりしているので木取り(丸太から木をどのように切っていくか)によって、色の違いがでてきます。
白と赤が混ざった材を源平(げんぺい)
下の写真の勾配天井の板を見ればわかりやすいかな。
1本の丸太から柱や梁、造作材のメインどころから木取りをしていって、残った部分を壁や天井に使う薄板を取るので、自ずと赤と白が混ざった源平になるのです。
赤だけ、白だけの壁・天井板にするには、丸太からいいところ取りをすることになるので、少し値段も高くなります。
上質の部屋を設ける時は指定して頼んでもいいかもしれませんね。
その場合、育ち方によって白太が多い産地、赤身が多い産地があるので、ちょっと聞いてみてもいいかもです。
何年かすれば、源平もすべて同じような色になっていくので、色の違いは全く気になりませんけど。
それよりも私は、木の目の方が気になります。時々、お化けのような木の目(表現べたかな)とか根深そうな節がちょっと苦手です。(汗)
赤でも白でもいいやんと言ってる私ですが、芯を持っている材(芯持ち材)か芯去り材(芯を外した材)は使うところによってはこだわったりするんです。
芯(中心部)は骨みたいなもので、芯持ち材の方が強度的には強いので、構造材には基本芯持ち材を使うのですが、芯去り材の方が割れにくいという特徴があります。
割れるといっても強度に関係するわけではないのですが、意匠的に柱をキレイに見せたい時は芯去り材を使ったりします。
芯持ち材と芯去り材とでは見た目も違うのです。値段も違いますが・・・
柾目、板目とか木の取り方によって見え方が変わってくるのですが、話すと長くなるのでまた後日。
これが芯持ちの柱。
これが芯去りの柱。
比べてみると何となく芯去り材の方が上品ではないですか?
特に和室などには芯去り材の方がいいのかなと思っています。
今回、西宮の家では
芯去り材でその上、赤身を使うところがあります。
芯去り材で赤??ちょっとよくわかなくなってきました??
もう一度丸太の写真を見てもらえば分かるのですが、赤って芯の部分を中心に円を描いてます。
赤の芯去り材?
はじめての製材所の人だと、この人何いってるんだろって顔をされます(笑)
芯の部分が赤いのに芯をはずして赤にしてと言っているのです。
一見、矛盾してるかのように思えますが、かなりの年数が経った大きな丸太ならそれだけ赤い部分が多いので、芯を外して赤い部分を取ることができるのです。
かなり贅沢な取り方です。
わざわざなぜ、杉の芯去り材を頼むかといえば、今回赤の芯去り材を使うところは外のポーチ柱です。
軒はあるので直接雨が当たることは稀ですが、一応外部なので、水に強い赤にしたい。
見た目的に割れたくないし、キレイに見せたいので、芯去りにしたいのです。
それで、赤の芯去り材。
そして上小節という頼み方をしています。
それは節が限りなく小さく少ないという意味で、
節ってそもそも、幹に巻き込まれた枝のことで、枝のない杉の木なんてないのです。
木を育てる人達が「枝打ち」といって、成長過程の早い時期に枝を切って、その傷跡を覆うように成長していき、柱の表面に節が出ない木を作っているのです。
だから節があるのが普通、ないのが特別ってこと。
私は節が嫌いと言ってるのは、根深い節だけですからね。普通の節は嫌いではありません(笑)
今の時代はもう枝打ちはしていないらしいので、節のない木や少ない上小節は今の時代しか使えないと言ってました。
今回、上小節の赤の芯去り材。
かなり贅沢な材。家は見なくてもこれだけ見に来ても価値はあると思います。
このように、杉って、育て方、どの部分を取るか製材の仕方によって色、見た目、働き、手間が違ってくるのです。
ちょっと面白くないですか。
「この曲がり材売れないけど良質なのでどっかに使ってくれない」とか
「この材一面は節だらけだけど、あとはとてもきれいなのでうまく使ってくれない」とか
「一本の丸太で一部屋の全部使ってみるとか」
現地の人ともっと密に木の家づくりをしたいなあと思ってます。
魚と木は同じような感じで、生きた素材を余らすことなく調理する。
木の家づくりもそんな取組ができればもっと面白く密のある家になるかなと思ってます。
ところで、私はすべての木の中で杉の赤身が一番好きです。
杉って安いイメージがありますが、すごく幅がって良質のものはこの上なく高価なのです。
杉の真赤な艶のある木は本当に美しかった。
ずっと以前になるのですが、茶室の水屋を設計させて頂いたときに赤身を使ったのですが、大工さんもこんなに切りやすい木は初めてといってました。