珪藻土、漆喰、土壁など、塗り壁はジメジメした湿気を取り除いてくれる夏の「調湿性」に注目しがちですが、
土にはもうひとつ要素があって、それに注目すれば土壁を使いたくなりますよ。
それは、「蓄熱」(熱容量が大きい)。
ちょっと小難しい話を(我慢して読んでください)
熱容量=蓄熱部位の容積×蓄熱材の容積比熱
容積比熱
コンクリート 2013 KJ/m3k
土壁 1327 KJ/m3k
プラスターボード 854 KJ/m3k
杉 783 KJ/m3k
グラスウール 420 KJ/m3k
上の数値からコンクリートや土壁などの容積比熱が大きい素材は、蓄熱しやすく、温まりにくいが、逆に一度温まったしまえばなかなか冷めにくいという性質があります。
断熱材として用いられるグラスウールは420と小さく、断熱材としては優れていても、蓄熱性は期待できないことがわかります。
一旦暖(冷)をとり暖かく(冷たく)すれば、暖(冷)房を切ったとしても、熱は逃げにくいので、快適な状態がつづくということにもなるのです。
土鍋を例に例えるとわかりやすいです。
土鍋は蓄熱性能が高いため、火をかければまずは土鍋が熱を蓄えるために沸騰するまでに時間がかかるけど、一度沸騰してしまえば、火を消してからも土鍋の熱により沸騰し続け、あったかいまま食べつづけることができます。
アルミ鍋 熱容量小
すぐに沸騰 ⇒ すぐに冷める
火を止めると
土鍋 熱容量大
なかなか沸騰しない ⇒ なかなか冷めない
火を止めると
でも蓄熱性能の高いはずのコンクリートの家って寒いイメージが・・・
コンクリートの場合、熱容量が高いけど、熱伝導率(熱が伝わりやすい)も高い。
ですので、昔のコンクリートの家は無断熱が多く、無断熱だと、蓄熱おろか外気の影響で蓄冷してしまい暖房をつけても一向に暖かくならないのです。
コンクリートの蓄熱性を活かすには、外断熱をして、コンクリートが外気の影響を受けないようにしてあげる必要があるのです。
「今のマンションは暖かい」ってよく聞く話ですが、断熱されたコンクリートのマンションで四方囲まれた住まいの場合、隣家が暖房器具をつけてくれるおかげでコンクリートが蓄熱し、床、壁、天井4面蓄熱されたコンクリートで包まれているので暖かいのです。
土壁はコンクリートまではいかないにしても木材の約1.6倍、グラスウールの約3倍であることから、土壁を利用することで一般的な家よりは蓄熱性能は期待できます。
プラスターボードに漆喰や珪藻土を1~3mm程度塗っても蓄熱性は期待できません。
土壁もコンクリートと同じで、土壁の外側に付加断熱をしてあげて外からの熱を断熱することで、土壁の蓄熱性が生きてきます。
日中、太陽の日射や暖房の熱で暖まった土の壁、暖房を利用して暖められた土の壁は日没後や暖房停止した夜中、朝方でもほどよく暖かさを保ち続けることが可能なのです。
せっかく暖房をつけたのだからその時だけを暖めるのでなくて、同時に蓄熱させて消しても暖かい。
これが蓄熱の良さ。
土で包み込まれた室内は外気の温度変化にあまり影響を受けず、穏やかな室内温度を保つことができるのです。
同じ塗り壁を使うのであれば夏、冬とも快適にできる「土」を選ぶほうが効果的だと思うのですが、
いかがですか。