月見台(つきみだい)

私が建築の仕事について間もないころ、年配の設計士の方の手書きの図面をみて、
月見台と書いてあったのが今でも心に残っていて、「月見台って何ですか?デッキと何が違うのですか」と質問したのを記憶しています。
答えとしてはデッキのようなものかなと話してくれましたが、私としては月を見る台って表現が何か粋だなと感じました。

月見を楽しむといえば、十五夜(中秋の名月)は月が最も美しく見える日として昔から親しまれていて、
十五夜とは旧暦8月15日に見える月を意味していて、現在の暦では9月末~10月初になります。
この時期の空が一番澄みわたっていて月が明るく美しいとされていたため、江戸時代などには宴と秋の収穫を感謝する祭事が広まっていたみたいです。

団子とすすきをお供えものとして飾って月を眺め祝うことは今では少なくなってきたのですが、
最近御引き渡しさせてもらった住まいで、「ウッドデッキでふたご座流星群みたよ」と言っていたので
今なお私たち日本人は空を眺めて星や月を見るのが好きなのだと思います。
「月見台」を設けるってとても贅沢であり付加価値のようにも思えますが、マンネリ化した日常で浮き沈みする感情のなか、
「月や星を眺める」「芽や花が咲くのを眺める」「太陽が沈むのを眺める」など
ふと自然を眺め、物思いにふける場は不可欠なような気がします。

手がける家づくりには、月見台(デッキ・縁)はほとんど設けるようにしています。
また、秋や春といった窓を開け外に出ても気持ちいい季節だけでなく、冬も夏も外を楽しめるために、室内の窓際に腰掛けなどを設けることもあります。

住まいは他の建築物と違って行くところではなく帰る場所なので、家は心身共にリラックスできる空間を作りたいなと思います。