杉を家づくりに使うために。


戦後復興のため、杉の木が大量に植林されました。
杉は、まっすぐに育ち、その上育ちも早いので、家づくりに使うにはとても使いやすい木なのです。

しかし、問題が一つあって、それは杉はというよりも木は育っている時から、木に含んでいる水分の量が多いのです。
家に木を使うためには、水分を抜いあげないと使えないのです。

杉の特徴として、、含水率が40%〜260%とずいぶん広い範囲でばらついていて、
木の外側の部分「辺材」だけでなく、芯の部分「芯材」まで水分を多く含むのです。
これがちょっと厄介なのです。

針葉樹の平均含水率
杉   辺材148.0% 心材113.1%
ヒノキ 辺材153.3% 心材33.5%
赤松  辺材147.3% 心材33.7%
サワラ 辺材154.5%  心材38.3%

含水率とは
ざっくりお話しすると、木だけの重量に対して木と同じ重量の水が含んでいると100%ってことなのです。

木の中にある水の特徴

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上の写真は杉の電子顕微鏡のものなのですが、ストロー状のものが連なっているのがわかると思います。

木に含む水分として、幹の中を通道している水はストローの中(内腔の中)に移動していくのですが、これを自由水といって、ストロー自体(細胞壁)同士を結合するのに使われている水が結合水といいます。

ちょっとむずかしい話ですが、もう少し我慢を(汗)

乾燥させるとまずは、自由水から抜けていき、重量は軽くなります。
その時の木の変化はまったくないです。
この自由水をすべて抜くと木の含水率は30%(飽和水蒸気量)になり、そこまでは木は動かないので比較的簡単に水分を落とすことができます。

30%以下からの水を抜く作業が厄介なのです。
自由水を抜き切ったので、細部壁同士を結合してる結合水を抜く作業になるのですが、これがとても厄介なのです。

結合水が抜けていくと、細胞壁自体も徐々に収縮するので、木が収縮します。
そのため、乾燥過程でひび割れなどを起きてくるので、それをどう工夫していき、建築資材として使えるくらいのひび割れ程度に乾燥させるかがみどころなのです。

杉の含水率はどこまで落としたらいいかというと、
その地の環境とバランスのとれた含水率(平衡含水率)まで落としてあげると木の動きが止まるのです。

日本では一般に屋外で15%、屋内は12%と言われていますが、 近年はエアコン設備の普及によりさらに低くなる傾向にあり、エアコンがきいた部屋では乾燥してるので10%を切ることもあります。

水分を多く含んだままの木材を使ってしまうと、施工後に膨らんで反ってしまったり、逆に隙間があいてしまったりという現象を引き起こし、建具の開閉に支障が出たりするので木を動かないように乾燥させてあげる必要があるのです。

ですので、平衡含水率の最低値10%くらいにしたらいいのですが、10%まで木がひび割れせずに乾燥させるの難しいかなと思います。

杉の乾燥方法

家づくりに使う木は主には乾燥機を利用して木の含水率を落とすのですが、先ほど話したとおり、含水率30%以下になると、木が収縮します。

木がみな同じように収縮すれば問題なにのですが、部分部分の収縮率の違うことによって表割れが発生するのです。

木の乾燥方法として、高温乾燥、中・低温乾燥があるのですが、

高温乾燥に設定すれば、表面の割れは防ぎやすいのですが、その代り木の内部の割れがでる確率が高くなります。
表面が割れていないので、見た目はいいのですが、この内部に割れがあると、構造材の仕口や継ぎ手の所で期待していた強度の結合ができなくなるのです。

また色もちょっと焼けたようにもなり、材ももろくなる恐れもあります。

中低温乾燥をすれば、内部割れは防げますが、表面の割れはでやすくなります。
その表面にでる割れは強度に影響するわけでもないですが・・・

乾燥の初期段階を高温で乾燥をさせ表面を固くし、その後中温乾燥をかけて表面の割れを防ぐなど
製材の方々も日々いろんな工夫をして見た目と強度を確保する方法をとってます。

まとめ

木の表面が割れているからと言って強度的問題があるわけではなく、むしろ内部にひび割れている木を使うほうが注意が必要で、
内部割れしてない木で表面に割れがあれば、完成時に隠れる木であれば十分利用できます。
表面に見えるところで、強度的に問題ないものは表面の割れがないものを利用する。

などなど、使う用途によって使い分けるようにしています。
私はやはり構造材は家を支えるものなので、見た目は二の次かな。

内外部ひび割れがでにくいようにするには、芯をはずした、収縮の少ない芯去りなどの部位のいいところを使う方法もとってます。

適材適所使い分けることで、効率よい使いかとなり皆様にも還元できています。
この杉を用途によって使い分けるコーディネートも木の家ならではのことかなと思います。