
「床は、杉がもっとも適している」10年以上にわたりすぎの床と向き合い、私が行き着いた確信です。
かつての私は、コストの安さや足ざわりの良さから杉を好んでいたものの、それはあくまで「自分の好み」にすぎないのではないか、と提案を躊躇していた時期がありました。
というのも、私の足の裏は非常に敏感。新建材のフローリングだけでなく、広葉樹(ナラやメープル)や少し柔らかいとされている桧やカラマツの無垢板でさえ、5分も立っていれば痛みを感じて座りたくなってしまうほどだったからです。
しかし、ある見学会での出来事が、私の確信を「確信」へと変えてくれました。
子供たちの体が選んだのは、杉の床でした
そのお家では、1階にカラマツ、洗面に桧、2階の寝室に杉を使っていました。
驚いたのは、時間が経つにつれ、子供たちが吸い込まれるように2階の杉の床に集まっていったことです。
広葉樹や他の樹種には座ろうとせずに、杉の床だけみんな杉の床に集まり、座ったり、這いつくばったりして夢中で遊んでいたのです。
理屈ではなく、敏感な肌をもつ子供たちの体は「どこが一番心地よいか」を本能で知っていました。
私の感覚は間違っていなかった。
子供たちがそれを証明してくれた瞬間でした。
見た目よりも「質感」が重要な理由
皆さんはフローリングを選ぶ際、何の基準で選んでいますか?
多くの方は、家の雰囲気に合う「見た目の良さ」で選ばれているかもしれません。
しかし、日本の暮らしを思い返してみてください。
もともと私たちは、畳に座って座卓で囲み、布団を敷いて寝る「床に座る文化」の中で生きてきました。
現代の住まいでも、床のどこにでも気軽に座れたり、ゴロゴロできたりしたら、これほどうれしいことはありません。
だからこそ、フローリングは見た目のデザイン以上に、直接肌に触れる「質感」や「居心地」が何よりも重要だと私は考えています。
なぜ、杉はあたたかく柔らかいのか?
「杉は冬でも冷たくない」と言われるのには、物理的な理由があります。
木材を顕微鏡で見ると、実は隙間(空気層)だらけです。
この空気の含有量を示す「気乾比重:という数値を比較すると、杉の特性がよくわかります。
杉 気乾比重 0.38 桧 気乾比重 0.41 唐松 気乾比重 0.53
(数値が低いほど空気が多く、温かい)
ダウンジャケットがたっぷりの空気を含んで温かいように、杉もその繊維の中にたくさんの空気を抱え込んでいます。この空気の層が、冬の冷たさを遮断し、自分の体温を優しく跳ね返してくれるのです。
だからこそ、杉の床は直接座ってもヒヤッとせず、じんわりとした温かさと、身体を受け止めてくれるような柔らかさを感じさせてくれます。
理想の厚みと、今の時代の選択
私は、杉のポテンシャルを最大限に引き出すのは「30mm厚」だと思ってきました。
厚みがあるほど空気の層が厚くなり、最高の踏み心地が得られるからです。
しかし昨今の物価高騰もあり、最近ではコストバランスを考慮して、「標準的な15mm厚の杉」も採用しています。正直言えば、最初は「30mmに比べて満足度が下がるのではないか」という不安もありました。
ところが、実際に15mm厚を施工させて頂いたお客様からも、30mmの時と変わらない
「裸足がきもちいい!」「冬でも温かい」という喜びの声をたくさん頂いたのです。
杉という素材そのものの力があれば、15mmであっても十分にその良さを多感してくれる。
そう確信してからは自信を持って15mm厚もおすすめしています。
傷さえも「味わい」に変わる、古美ていく楽しみ
もちろん、柔らかい杉には「傷つきやすい」という短所があります。
しかし、杉は年月を経て樹脂が回り、ツルツルとした飴色へと変化してきます。
生活の中で刻まれる傷さえも、家族の歴史として馴染んでいく。
それを古美(こび)ていく」楽しみとして愛せる方に、ぜひ選んで頂きたいです。
スリッパを脱ぎ捨てて、一年中裸足で過ごせる。そんな心からリラックスできる暮らしを、私は杉の床を通して提案し続けています。

