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こんにちは、水谷です。
建物の話をしていると、よく、「昔の物や和風好き」と思われがちなんですが、実はそうでもないんです。
北欧の建物も好きですし、フランスにあるような白壁のカフェとかにもよく行きます。
みなさんも、おしゃれな飲食店やカフェに行くことがあると思うのですが、
普段は口にすることができないような料理を味わえるだけでなく、センスのいいインテリアや洗練された店内の雰囲気を楽しめますよね。
「こんな空間で暮らしてみたい」と思うこともあると思うのですが、
あらためて考えみると、毎日の「生活の場」として、イメージしにくくないですか?
店はあくまで「特別な時間を楽しむ場」で、家は「普段の生活をする場」。
その役割はまったく違ったものなのです。
「特別な時間を楽しむ場」に必要なのは、「目で見て楽しめる空間」で、「普段の生活をする場」には、「落ち着く空間」が必要なんです。
「落ち着く空間」を考える時、どうしても「風土にあったもの」を意識してしまうので、「和」に関する話題が多くなってしまうのだと思います。
「落ち着く空間」にとってとても大切なことは、「機能美」だと思っているのです。
機能美
日本の季節は「四季」と言われように、「春夏秋冬」がはっきりしていて、それぞれの季節毎に気候が全く違います。だから、日本の家はそれぞれの季節に対応できるように、考えて造られているんです。
例えば、三角の屋根「切妻(きりづま)と深い「軒(のき)」。
梅雨や台風などの激しい雨はもちろんですが、年間を通じて降水量が多いので、降った雨がスムーズに家の外に流れるように・・・ということで、屋根の形状は「切妻」が多いのです。
また、叩きつけるような強い雨が降っても、室内に雨が入り込まないように、そして外壁を守るために、軒が深くなったのです。
雨から家を守るだけでなく、夏の強い日射しを遮るためにも、深い軒はとても有効で、以前にもお話した 「庇」や「障子」なども、同じように、強すぎる日射を緩和するために造られました。
雨だけでなく、雪が積もる寒い地方では、屋根に積もったは雪をできるだけ自然に下に落ちるように、屋根の傾斜が強くなっているんです。
蒸せるような暑さの夏には、前にもお話させて頂いた 「土壁」がひんやりと湿気を緩和してくれます。身近な素材だったと言うこともありますが、何より「調湿性に優れている」からこそ、土は家づくりに好んで使われてきたのです。
さらに、日本は地震や台風も比較的多いので、万が一に備え、頑丈な柱や梁で、形の整った、揺れには負けない骨組みを必要です。
・・・と、ほんの少しの例ですが、移りゆく季節に順応し、厳しい自然から住む人を守るためにと考えられ、いつでも快適に過ごせるように家は造られてきたのです。
すべての形には理由があるわけなんですが、ただ単に役割を与えるだけでなく、そこに「美」や「粋」を求めて進化してきたのが、日本の家の佇まいだと思うのです。
そんな日本の家の佇まいに、「機能美」を感じるのです。